確立された薬剤師の立場に惹かれて就職

    【プロフィール】
    T・Kさん(30歳前半/男性)
    国立の薬学部を卒業後
    500床以上ある大病院にて5年間薬剤師として勤務していた
    現在は転職をしており、別の業界で活躍中

    なぜ新卒で病院を選んだのですか

    実は新卒の時には特にやりたいこともなかったので、就職先を決めていなかったんです。
    大学5年生の病院実習で受けた印象は治療に関する意思決定は全て医師が行い、薬剤師はその間違い探しをしているというもので、それが嫌でしたね。
    医学部への編入も考えましたが、編入試験は難しすぎて受かりませんでした(笑)。
    薬学部を卒業して、医学部受験を続けるか迷っていた時に、病院の求人を見つけたため、受けてみたところ正社員として受かったので、とりあえずという感じでその病院に就職しました。

    僕が就職したときは6年制の1年目で、これから薬剤師の仕事が変わっていくという話がありました。僕が通える範囲の病院でアグレッシブな姿勢を持っていて、「これからもっと薬剤師は存在感を出していくんだ!」「やりたいことをやったらいいよ」といった姿勢だったため、そこに惹かれてこの病院で働こうと思いました。

    では医学部の入学は諦めてしまったのですか?

    諦めたというよりは辞めてしまいましたね(笑)。

    理由はいくつかありますが、まずは薬剤師の視点で医療現場を見ようと思いました。薬剤師として働く中で「なにか違うな」と思ったら医学部を受験しようと思っていましたが、実際働いてみたら仕事に集中していました。
    そして実際に働いてみた結果、薬剤師の視点で「薬剤師が違うな」というよりは、現場で働いている医師や研修医の姿を見て「医者は自分とは違うな」と思ったので、医学部受験を辞めました。

    一日の仕事のスケジュールを教えて下さい

    業務時間は朝8時30分からで、終了は17時30分です。
    業務内容は、「内外用薬調剤」「注射薬調剤」「抗がん剤ミキシング」「TPN混注」「DI」「在庫管理」などの薬剤部内で行う業務と、病棟で入院患者の薬物治療を管理する「病棟業務」があります。
    1年目は、主に「内外用薬調剤」「注射薬調剤」「抗がん剤ミキシング」「TPN混注」を担当し、2年目以降で「病棟業務」を少しずつ担当します。
    3年目ぐらいから、自分の担当病棟を持って、連日同じ病棟で業務を行い、自分の専門性を高めていきます。

    カンファレンスがとても面白い

    3年目以降は糖尿病や腎臓病患者の病棟を担当していました。
    好きだった業務は、カンファレンスと患者対応です。
    カンファレンスは、医師、看護師、検査技師、栄養士と薬剤師が集まって、入院患者さんの治療方針を話し合いますが、各職種の視点と考え方を知ることができて、とても面白く、また勉強になります。

    患者対応は、「表に立つ薬剤師」として活躍する1つのイメージだったので、やりがいを感じます。病棟の性格上、多いのは糖尿病の教育入院とかで、それなりに元気な人の生活改善が目標になりますが、 たまに来る癌の患者さんの疼痛コントロールは、短期間で結果が求められるので、難しいながらも特にやりがいのある経験でした。
    痛みを取るためには、薬の提案だけでなく、痛みの辛さを吐き出してもらうなど、薬学的知識の範囲を超えた対応が必要なんだと学びました。
    嫌いな業務は特にありませんね。話の長い患者さんや、困った患者さんは実際にいますが、その辺は仕方のない事ですからね(笑)。

    社風や労働環境について「人間関係や雰囲気」・「価値観や考え方」・「仕事の進め方や評価」の3点をお聞かせください

    「人間関係」は比較的よいと思います。また薬剤師の立ち位置については一般的に低く見られがちですが、この病院ではそんなイメージは持たれていなく、医師への疑義紹介でも邪険にされることはあまりありません。

    「価値観や考え方」については、全人的医療を心がけていて、「患者さんの病気は精神的な部分も身体的な部分も含め、全てケアをする。」といった価値観です。人道的でハートフルなイメージで、患者さんに対して奉仕の精神が強く、逆にそれが従業員の負担になっている部分もあるかもとは思いますね。


    「評価」については、時々かなり気に入られた人がポッと昇進することもありますが、基本的には年功序列です。
    「仕事の進め方」は、病院へのアピールのため、分かりやすい業績を出す事を重視しているように感じます。例えば、病棟業務を通して指導料を算定できるのですが、その件数に目標を設定して、できるだけたくさん指導料を稼ぐ、あるいは学会発表を数多く行い、それを病院へ報告する等です。どれも間違いではないと思うのですが、質の担保が不十分だと感じており、今後の課題だと思います。
    今後、薬剤師の業務は拡大していきますが、マンパワーが不足しているので、なんとか病院にアピールして人を増やしてもらいたいのでしょうね。大学病院ではない、市中の総合病院の辛いところだと思います。

    休みは多いが有給が取りづらかった

    休みは暦分もらえるため、ほかの病院に比べれば多いと思います。しかし有給はなかなか取れない環境でしたね。
    記録のつけ方はタイムカードでしたが、職場にいる時間と実働時間は別で、人によっては勉強会の時間や先輩に仕事について教えてもらっている時間は抜く人もいました。

    「女性の働き方」については、結婚すると辞めてしまう人が多いです。しかし、薬剤部の上司が仕事復帰できるように頑張っていたおかげで、産休を取得しても復帰する人はいました。職場の人間関係は悪くなかったことが理由の一つかもしれません。

    ずばり年収を教えてください

    実は年収は5年経ってもほとんど上がっていなかったです(笑)。
    家賃補助や交通費や残業代を全て込みで480万円くらいだったと思います。残業時間はだいたい月に30時間ほどです。
    従業員の給与は平均よりも安いのではないかと思っています。

    この業界の不安点はなんでしょうか

    現状、医療費や薬代が高くなっているなかで、人件費、つまり給料が減らされていくのではないかという不安はあります。
    そうなると給料が増えていないのに業務量だけが増えていくのではないかと思い、病院の経営次第では、暗い未来をたどる病院も増えてくるかと思います。

    この病院や業界に入りたいと思う方に向けてメッセージをお願いします

    病院で働くことによって、治療に関わることの偉大さがわかり、本当に人の役にたっていることがわかります。しかしやりがいがある分「給料・休み・時間」などの環境は犠牲にされがちです。
    病院で働きたいと思った方は、焦らずコツコツと気長に続けられる人が向いていると思います毎日患者さんから「ありがとう」のご褒美が貰えるので、それを励みに長く続けて欲しいですね。
    仕事をしていればスキルは身に付きますし、薬局やドラッグストアなど、ほかの職場に比べて断然新しい知識が入りやすく、医師の話も聞けます。続けることで気が付けば立派な医療従事者になっている、素敵な仕事だと思います。

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