【プロフィール】
伊藤聡志さん(31歳 /男性)
名城大学薬学部を卒業後、ノボノルディスクファーマ株式会社開発本部臨床推進部にてグローバル治験を担当、その後アクセンチュア株式会社デジタルコンサルティング本部にてシステム開発に携わる。
30歳から本格的にプログラミングを学び始め、現在はベンチャーにてバックエンドエンジニアとして活躍中
どのような仕事をしていますか?
今はヘルスケア系のベンチャーでWebアプリ/iOSアプリのプロダクトの開発を担当しています。
新しい機能を追加したり、すでに実装されている機能の改善をしています。「改修した後はどういう機能にすべきか?」という機能の定義から始まり、設計、開発、テスト、リリースといった流れで開発をしています。
開発を着手する前にこの機能はユーザー体験を向上させるだろうかといったことを検討したり、プログラムを書く前にどういうロジックで実装すると簡潔にかつ第3者が見てわかりやすいプログラムになるかといったことも検討します。
基本的に決まりきった作業はなく、「どう設計すべきか?」、「何をテストすべきか?」など考えながら作業します。
また、システムリリースの締切は決まっているので、任された仕事をブレイクダウンし、自分で細かい期日を設定し、周りと調整しながら仕事を進めます。
自由度の高い仕事なので、決められた期限まで達成できるように自身で考えて業務設計し、それを遂行することがとても大切な仕事だと思います。
なぜ薬剤師からエンジニアを選んだのですか?
自分はデジタルヘルスという領域に可能性を感じているため、エンジニア/薬剤師として今の仕事を選んでいます。
自分の働く目的は「世の中から1つでも病気を無くす」ことなのですが、デジタルヘルスでその目的を達成したいと思っています。自分がそのような働く目的を持っているのは薬学生時代に親が癌になってしまった経験がきっかけです。幸い親は癌を早期発見できたので、治癒しましたが、とても辛い思いをしたので、病気で苦しむ人を1人でも多く減らしたいと思っています。
そのため新卒では「病気を治せる新薬を世に送り出したい」という思いで、製薬会社の開発本部に入社しました。
しかしながら、すでにご存知かと思いますが、新薬の開発が成功して上市される可能性は非常に低く、その中で病気を根本から治す化合物に出会う確率はさらに低くなります。そのため、薬以外の方法で病気を無くす方法はないかと模索するようになりました。
その時に知ったのがデジタルヘルスでした。IoT医薬品や治療アプリなど薬以外で病気の治療や予防にアプローチしている人たちがいることを知り、ITの力で病気の予防や治療をできないかと考え、自身でプロダクトを作りたいという思いもあったためITの勉強を始めました。
デジタルヘルス領域を勧めていきたい
医療とITの二足のわらじを履いていることが自分の強みであるため、今後もこの2つの知識を活かせるデジタルヘルス領域でプロダクトを作っていきたいと思っています。
医療業界はIT化が非常に遅れており、まだまだ効率化できるところが残っています。
働く方達の労働環境を整えることや、薬ではなくデジタルプロダクトで病気を予防して医療費を削減することなどITで貢献できることは色々あると思います。
アプリ vs 医薬品で治験を行なっている会社もありますので、今までにない病気のアプローチができるようになるのではと期待しています。
今の会社を選んだ理由はなんでしょうか?
理由は大きく分けて2つあります。
1つ目の理由は、私が開発したいと思っていた言語でサービスを開発していたためです。
2つ目の理由は、弊社で開発しているサービスが医療現場で必要とされるものだと思ったからです。弊社ではいくつかのサービスがありますが、その1つは入社前に使ったことがあり自分の医学知識をアップデートするのにとても役に立っていました。
エンジニアとしても薬剤師としても面白い会社だなと思っているので、開発に携わらせていただいています。
今後のデジタルへルス業界の動向
デジタルヘルス業界は色々な企業が参入してきており、今後も色々な企業が参入すると思います。
人工知能で腫瘍を検知してくれる内視鏡や、抗精神薬のエビリファイにチップを埋め込んだデジタル医薬品(エビリファイマイサイト)などもあります。
しかしながら、医療現場にフィットせずに苦戦している企業もたくさんあります。そのため、医療現場の課題感を持ってサービスが開発をできる人材がもっと増えれば、もっと面白いプロダクトが世の中にでてくると思います。
時代の流れが激しいからこそ、常に学習が必要
業界の不安点を挙げるならば、デジタルヘルス業界に関わらず「エンジニアの仕事は技術のトレンドの移り変わりが激しい点」です。
現在盛り上がっている技術も2~3年後にはどうなっているかわかりませんし、逆にあまり盛り上がっていなかった技術に需要が集まる可能性もあります。
そのため新しい技術のインプットが必要で継続学習は欠かせません。流行っている技術を習得していれば需要と供給のバランスで自分の市場価値は上がりますが、その技術が廃れれば一気に自分の需要がなくなる可能性もあります。
自分の腕一本で仕事をするからこそ、時間的自由や高年収が狙える
エンジニアの仕事は自身の技術力と実績で食べていく仕事です。そのため技術が高ければ高い年収を得ることができ、自由に働ける環境もあります。
優秀な方であれば、若くして年収1000万円を得ている方もいるかと思います。また、企業によってはリモートワークが可能で、フレックスで勤務することが可能です。
受託開発を行なっている会社では年収が低く出る可能性もありますが、腕を磨いて自分が評価される環境に身を置けば年収をあげていける職業だと思います。
エンジニアに向いている方はどんな方でしょうか?
プログラムを書いていて楽しいと思える人、情熱を注いで開発したいプロダクトを持っている人だと思います。
また、細かい作業が得意な人や、常に新しい技術に好奇心を持てる人が向いていると思います。高い年収を得ているエンジニアは開発することが好きで、休日も趣味でプログラムを書いている印象があります。彼らは努力を努力と思っていないし、TVゲームをやっているような感覚でただ楽しくてプログラムを書いているのだと思います。
どの分野でも同じだと思いますが、仕事で結果を出すには好きかつ得意なことを仕事にする必要があると思うので、エンジニアにおいては技術に対して好きという感情を持てるかが大事だと思います。
今後のキャリアプランについて教えてください
エンジニアとして技術力をあげつつ、医療とITの知識を駆使して世の中の医療課題を解決していくつもりです。普通のエンジニアが持っていない薬剤師×エンジニアの視点でプロダクトを作っていきたいです。
また、どんどん医療現場の課題に出会いたいと思っているので、臨床現場の方からお話を聞きたいと思っています。
この会社や業界に入りたいと思う方に向けてメッセージをお願いします
もし、薬剤師からエンジニアになりたいという方がいらっしゃるのであれば、プログラミングスクールに通ったり、参考書を買うなりしてまずは何かしらのプロダクトを作ってみることをおすすめします。自分はプログラミングスクールに通ってプロダクトを作りました。
プロダクトを作ることでプログラミングが自分に合うかどうかわかるし、プロダクトができれば自分の自信にもなります。
プログラミングスクールを卒業しただけでエンジニアになれるかどうかはその方がどれだけ本気でプログラムを書いたかにもよりますが、現在医療系のプロダクトを作っている会社は増えてきているので、チャンスはあります。
薬剤師として医療の視点を持ちつつ、プログラムもかけるという強みをアピールできればエンジニアとして採用してくれる企業もあると思います。
また、自分が感じていた課題を解決するためにパソコン一台あればプロダクトが作れる今の仕事がとても楽しいと思いますし、やりがいのある職業だと思います。
一方で、エンジニアに関わらず、自分が「何の課題を解決したいのか」、「自分は何が好きで何が得意なのか」を、就職してからも常に問い続けて欲しいと思います。
これからは会社ではなく個人で仕事ができる社会になっていくと思いますので、薬剤師という肩書きに縛られずに「”自分は”誰の何に貢献する人生にしたいのか」ということを自分自身も問い続けていきたいと思います。
社会や他人が良いと言う価値観ではなく、”自分が”やってみたいという思う価値観を大事にして欲しいと思います。